1/29 超高級腕時計取っ替え引っ替え、タイ副首相に疑惑 

汚職追放を掲げるタイ軍事政権の幹部、影の首相とも呼ばれるプラウィット副首相兼国防相(元陸軍司令官、72)が資産報告書に記載がない1個数十万―数百万バーツの超高級腕時計を取っ替え引っ替え着用していたことが明らかになり、辞任圧力が高まっている。

副首相の腕時計好きが発覚したのは昨年末。日差しを遮ろうとした腕にきらめく超高級腕時計に気づいたネットユーザーが過去に遡って副首相の写真を調べ、少なくとも25本の存在を確認した。総額はおよそ4000万バーツ。これらの腕時計は資産報告書に記載されておらず、副首相は「知り合いから借りた」と釈明した。

タイのネットユーザーはこの釈明に納得せず、メディアも連日報道。批判に押される形で、タイ汚職取締委員会が捜査に乗り出した。ただし、汚職取締委のトップはプラウィット副首相の元部下で、公正な調査が行われるかどうか疑問視されている。

こうした中、タイ国立開発行政研究院(NIDA)世論調査センター(NIDAポール)のアナン所長が29日、腕時計疑惑に関する世論調査の公表をNIDA上層部に禁じられたとして、抗議のため辞任すると表明した。

NIDAのプラディット学長は世論調査の公表を禁じたことを認め、この問題は汚職取締委が捜査中で、現時点で公表するのは不適切だと主張。また、軍政から公表を禁じるよう圧力がかかったという見方を否定した。軍政の報道官も世論調査の公表禁止を指示した事実はないと主張した。

辞任したアナン所長は2014年の反タクシン派政権デモに参加し、同年の軍事クーデターとその後の軍政に支持を表明していた。民主主義よりもエリート層による安定した統治を望む保守派とみられるが、政財界の浄化の期待をかけた軍政から汚職疑惑が浮上し、世論調査の結果も封印されたことで、軍政に幻滅したもようだ。

プラユット首相(元陸軍司令官、63)は元上司であるプラウィット副首相のスキャンダルを「個人的なことだ」と一蹴。アナン所長の辞任については「私に何の関係がある」と苦い表情で言い捨てた。

■軍政維持シナリオに影?

軍政は来年以降にタイミングをみて民政移管のための議会下院(定数500)総選挙を実施するとみられる。ただし、軍政が作成し、昨年4月に施行した新憲法では、国会は議会上院(定数250)と下院の2院政で、上院は当初の5年間、軍政による選任。このため、軍が一部の政党と手を組んで国会の過半数を制し、総選挙後も政権を維持することが可能性だ。

軍はこうしたシナリオを描いているとみられるが、プラウィット副首相のスキャンダルの処理を誤れば、絵に描いた餅になりかねない。実際、この問題が注目を浴びて以降の今月17―19日に私立バンコク大学が18歳以上のタイ人を対象に実施した世論調査(回答者1114人)では、「首相を選ぶ権利があったらプラユット首相を選ぶか」という質問に36.8%が「はい」、34.8%が「いいえ」と回答。2017年5月に実施した調査では、同じ質問への回答は「はい」52.8%、「いいえ」25.6%で、首相への支持は急速に落ちている。

また、今月24、25日にNIDAポールが18歳以上のタイ人を対象に実施した世論調査(回答者1250人)では、「政府に非正常で不透明なことが起きていると思う」との回答が76.3%、「汚職取締委の捜査に政府が介入する」との回答は61%に上った。

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